studio83

築約20年の木造2階建戸建住宅のフルスケルトンリフォームである。
フリーカメラマンとデザイナーの夫婦、生後半年の子供、3匹の猫のための住まいである。
機能が集中する1階と使い方が不確定かつ流動的な2階という対照的な内容について、それぞれどのように答えるかが課題であった。
1階は、集中するための作業場とオープンなリビングという共存し難い要件に対し、一続きの空間の中心にキッチンなどの水回りボリュームを配置し、壁や扉で仕切ることでは無く、そのまわりを回遊可能にすることで、それぞれの要件を満たす居場所となるよう考えた。
2階は、個室を前提としながら、壁のような4枚の大きな引戸を開閉することで、大きく繋がることと閉じることが両立する空間とした。家族の状況の変化による流動的な使い方に対応しやすいよう配慮し、将来的に間仕切りが増設されてもそれぞれの部屋に特徴が出るよう変化をもたせた立体的な天井にしつらえた。
また、建売住宅特有の単調な天井高さと断面的な断絶に対し、既存下屋部分の高さをあげ、新しくハイサイド窓をつくることで、リビングと作業場の空間に動きをもたらし、既存住宅では体験出来なかった空間のつながりや豊かな光を得られることとなった。
ごく一般的な建売住宅のリノベーションについて、既存住宅には特出すべき要件や手がかりとなる得る拠り所を見つけ辛いことが多い。結果的に表層を新しくしただけでは、その無個性な空間に引きずられ埋没してしまう恐れがある。その中でも、建主の要望や周辺環境をいかに読み解き咀嚼するのかという当たり前のことを丁寧に積み重ね、この場所で「何を」設計するのか、という答えを探っていくプロセスであった。特に、機能で埋め尽くされた既存住宅の中に、新しく「ムダ」や「スキマ」を入れ込むことが出来た点において、成功したように思う。これからは、建主の生活が重なり、より彼ららしい個性的な空間に育っていくだろうことを楽しみにしている。

type:renovation
date:2016.06
location:神奈川県

構造・構法: 木造軸組構造(駐車場 鉄筋コンクリート造)

規模: 地下1階、地上2階建
敷地面積:121.60㎡
建築面積:48.06㎡
延床面積:90.26㎡

設計監理
studio83(意匠:辰巳知子/構造:辰巳雄一)

施工
渡辺富工務店 担当/星野譲
棟梁 渡辺富工務店 担当/岩田邦明
外構 小萱庭園設計 担当/小萱貴彦

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