お盆ですね。
ご存知の通り、お盆とは、年に一度、祖先の霊が子孫の元に帰ってくる期間とされ、祖先が迷わず家に帰ってこれるよう迎え火を焚いてお迎えし、戻ってきた霊を供養する日と言われています。
宗教心の薄れた現代の日本でも、お盆の習慣だけは色濃く根付いていて、年に一度お墓参りや仏壇に手を合わせに実家に帰る方々も多いのではないでしょうか。習慣というのは、意味とか理由とかを超えて、なかなか良い側面も持っているようです。
さて私個人としては、実家の両親は東京にいることもあり、いわゆる田舎に帰る、というような習慣は子供の頃から多く有りませんでした。
そのため、盆正月など多くの人が実家や地元に向かう時期でも、変わらず日常を東京で過ごすことが多いです。
この時期にいつも感じる不思議な感覚があります。
うまく表現出来ませんが、それは東京から人が減るー擬音語で言うなれば、がらんと、ぽかっと、しんと、密度感が極端に薄くなる感じとでも言いましょうか。
同じ東京という場所であるのに、いつの間にか急に非日常の世界に迷い込んでしまうような、田舎に帰るという物理的な移動以上の、感覚的な移動を体験しているような気持ちになります。
数年前から、私はこの感覚の時期を「東京が裏返った」と勝手に名付けています。正確に言うと、日本が、の方が正しく表現出来ているかもしれません。
いつも表の東京が、急にその他の地方に取って代わられ、裏となる瞬間。
その感覚が、何だかとても心地の良く、私にとってのお盆の感覚的原風景となっています。
『あ、東京が裏返ったー。』
話しは変わりますが、建築家の長坂常さん(スキーマ建築計画)の著書で、
「B面がA面にかわるとき」という本があります。2009年に発売された本ですが、その増補版が来月出版されるとのことで、さっそく予約をしました。
おこがましいですが、先述した『裏返った』感覚と遠からずな内容かと想像し、建築の世界でもこの感覚がヒントになりそうで、今からとても楽しみです。
A面B面では全く扱いが違うけれど、A面とB面は表裏一体、言ってしまえば、裏と表なだけなんだよなぁ。
そう思うと世の中まだまだ面白いことがたくさん有りそうな気がします。