愛媛県の豊かな自然に囲まれた築40年程度、戸建の部分リフォームである。
東京から移住して3年目の家族5人(夫婦+子供3人)は、東京では考えられない贅沢な広さ(7DK)の戸建に住む。
それぞれの部屋を個室として振り分けるのではなく、用途によって家族で使い分け(食べる部屋、寛ぐ部屋、勉強する部屋、寝る部屋、収納の部屋のように
それぞれの部屋を家族で共有)、彼女たちらしい生活を営んでいた。
既存北面にある心地の良い和室二間を、家族が寛ぐ部屋(リビング)として使っていたが、ダイニングキッチンと廊下を隔てて分離されており、孤立感があった。
そこで、既存南面にあるダイニングキッチンとその隣室をつなげて一室とし、そこに寛ぐ部屋(リビング)の機能を移すことを考えた。
生活習慣が確立されている家族(特に子供たち)にとって、既存二間の和室リビングから新しいリビングへと居場所を移すためには、本能的に行きたいと思える理由(仕掛け)が必要であろう。
それに対して、まず一つ目に、南側に面したLDKの室を拡張するように、既存土間床だった軒下にウッドデッキを設えた。
畑に囲まれ、土に近い生活をしている家族にとって、採った野菜を干したり、デッキで食事をしたり、友達と遊んだり、ただボーッとしたりと、室内におさまらない楽しみがウッドデッキに拡張し、より身近になるように考えた。
加えて、古民家に特徴的である大きな容積を持つ屋根裏を解放し、LDKを望むロフト空間とした。
LDKからではなく敢えて廊下から階段でアクセスし、同じ空間に居ながらも距離感を選択できるように、離れのような場所となるように考えた。
本を読んだり、寝転んでLDKで他の誰かが居る音に耳を澄ませたり、また何より、普通とは違うロフト空間の高さや見え方は、子供たち(時には大人たちも)の心を弾ませ、この建物の広さを感じさせるおおらかなLDKを作る。
それぞれが別のことをしていても、気がついたらそこに居て気配を感じ、空気を共有している。そんな風景を描いた。
長年住み慣れた東京を離れて移住することも、常識にはまらない部屋の使い方も、誰かでは無い、自分たちの物差しで生活すること。
そんな家族が今後この家を如何に楽しんで使い倒すか、その土台となる改修となったのならば嬉しい。
【BEFORE】
所在:愛媛県西条市
施工:株式会社ウィンウィンホーム
写真:サチカメ(※11、12枚目 studio83撮影)
設計:studio83