【3F】
【4F】
【2F】
【1F】
【B1F】
設計者の自宅兼事務所である。
自宅の購入を考えた時、住居と事務所という機能に加えて、本来閉鎖的な性質を持つ個人の住まいと仕事場を、外に対してもう少しオープンに開き、それによって起こる偶発的な現象を誘発するような実験的な試みとして、+αの場所を作ることができないだろうか、ということが一つの大きな動機であった。
そのためにはどのようなエリア、仕組み、方法(新築かリノベーションかなど)が良いか、数年間の検討期間を経て、ようやく出会ったのが、三鷹駅から北側へ約1.7kmほど、戦前は中島飛行機の武蔵野工場があった特異な歴史的背景を持つ地域にある商店街の一角の小さな古ビルであった。
そのビルは、地下1階、地上4階建+ルーフバルコニー、建坪約7.5坪の、いわゆるペンシルビルである。
既存1階は、テナント貸し、2階より上を4人家族の住居として使われていたが、今回の改修で、地下1階と1階を+αの場所、2階を仕事場、3階より上を住まいとした。
1階には、既存の2階で使われていたオールステンレス製キッチンを再利用して設置し、実験的にイベントなどを企画し、仕事や住まいではない、それ以外の「コト」が起こる場として運営している。
(23年2月からは、新しい使い手のお店がオープン予定。)
2階より上階を設計する上で、ワンフロア約24㎡(階段含む)と狭小なため、細かい操作を重ねるのではなく、建物全体を統一する背骨のような要素で構成したいと考えた。
一つ目は、平面を横切る大きな2枚の引戸を作る。引戸を同時に、または別々に移動させることで、階段が現れたり、居室を区切ることができる。
狭小な平面を細かく分断しないために、空間を遮る垂直面の要素は極力減らす、もしくは可動するようにし、必要最小限の機能や収納は水平面を区切ることで確保した。
二つ目として、北側の壁には、カウンターを一列通し、2階は作業机、3階はキッチンカウンター+ベンチ、4階は収納+洗面カウンターと、各階で用途を変えた。
その二つ要素を各階共通とした上で、各階の用途によって、内装は仕上げ方の濃度を意図的に変化させた。具体的には、下地現しの状態からきちんと仕上げる状態を意図的に選択し、物の作られ方やその過程を観察できる標本のような建物にできないかと考えた。
結果として、公共性の高い下階からプライベート性の高い上階という、各階の用途によって性格付けられる外との関係性の濃度(パブリック⇆プライベート)と内装の仕上げ(ラフさの強弱)が呼応する表現となった。
設計者の自宅兼事務所という場所をもって、今後も生活や状況の変化に対応しつつ、「暮らしの中の建築」を考え続けることができる実験場として、手と頭を動かしていきたいと考えている。
○PLAN○
【Before】
所在:東京都武蔵野市
施工:cho-ya、一部自主施工
写真:studio83
設計:studio83