築30年の鉄筋コンクリート造2階建の中古住宅リノベーションである。
建築家である施主の父親が設計した自邸を、息子家族が引き継ぐための改修工事であった。
築30年とはいえ、鉄筋コンクリート造の建物のため、建物の主要構造部は古さを感じさせない良い状態で残っていた。
既に他界されていた父親が、自分と家族のための家として、何を考え何を大切に設計したのか、それを伺い知ることはもうできない。
代りに、残された建物を詳細に分析し、自分なりに理解、咀嚼することから、設計行為は始まった。
その上で、建物の骨格=父親の意志を、一新するのではなく、正しく残し、新しい世代の為に正しく重ねること。
それが『家』を引き継ぐという新しい門出に、私が添えることのできる設計だと考えた。
丁寧にメンテナンスされていたとはいえ、古びてきていた設備一式、内装仕上げ一式の改修工事を中心とし、間取りの変更は最低限にとどめた。
また、新しい家族の暮らしに寄り添うため、開口部の断熱性能や、暗かった1階リビングの採光を建具を更新することで補填した。
新しい世代に引き継がれ、これから一族の核となる『家』として、家族が集まり、心身ともに拠り所となるような設えを心がけた。
所在:東京都武蔵野市
施工:株式会社水雅 /担当 戸石謙治
写真:studio83
設計:studio83